インタビュー記事#3 国際協働教育の魅力とは

国際協働教育の魅力とは-インド工科大学グワハティ校からの視点-

久米 本日はインタビューの時間を頂き、ありがとうございます。お二人は岐阜大学には何回ほどご訪問いただきましたか。本学の印象を教えてください。

サフー 岐阜大学には2010年から12回ほど訪問しています。2014年には4カ月以上、岐阜大学に滞在しました。応用生物科学部や工学部の多くの教員らとやり取りする機会を得て、両部局と繋がることができました。岐阜大学は日本の他大学に比べて、リーダーシップが非常に頼もしく、強い国際化ビジョンと高い柔軟性を持っている印象を受けました。共通のプラットフォームを作り上げるのは非常に挑戦的で困難を伴うものです。インドと日本では仕事のやり方や考え方に違いはありますが、交流がより活発になれば、しっかりとした相互理解の土台を作り上げることができます。それがジョイント・ディグリープログラム(JD)の実施と成功に寄与することと思います。

久米 ありがとうございます。では、カティアール准教授はいかがでしょうか。

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カティアール 2016年8月に岐阜大学を初めて訪れました。岐阜の方々とも交流し、初めてジョイント・シンポジウムの運営に携わりました。このシンポジウムの運営は本当に素晴らしく、私だけでなくインド工科大学グワハティ校(IITG)から訪問した者が皆、岐阜大学のマネジメントとホスピタリティに感銘を受けました。その後、2016年12月にウィンタースクールのセレモニーに出席するために2度目の訪問をしました。その際に岐阜大学は様々な大学と協働教育を推進したいと考えているのだなと思いました。ウィンタースクールは、マレーシア国民大学とIITGの学生が3週間、岐阜大学に滞在するという短期プログラムでありながら、ラボワークや日本語・日本文化の体験が非常に効果的に行われていました。参加学生らのプレゼンテーションを見て、岐阜大学での研究環境が非常に良いこと、また短期間であっても教員や日本人学生に溶け込むことができる環境であることも知りました。今回の訪問は3回目となりますが、他の学生とも交流することができ、岐阜大学の先生方は、学生に対して専門知識の教授だけでなく、学生との距離が近く学生のニーズに対して丁寧に応えられていることに気づきました。私がどこに行っても学生たちはいつもリラックスしているように見えます。つまりそれは岐阜大学の教育システムにおいて学生への関心がとても高いということなので、称賛に値することと思います。

柳瀬 どうもありがとうございます。今回は、岐阜大学で講義を行っていただきましたが、岐阜大学の学生の印象はどうでしたか。

サフー この8年間、私は小山博之教授(応用生物科学部)と共同研究を進めてきました。日本学術振興会からそれぞれ2年間の三つの助成事業を成功裏に終了させ、教員と学生の双方向での交流が実施できました。そのおかげで、様々な岐阜大学の教員と知り合う機会を得て、様々な共同研究を行うことができました。そして今回、柳瀬笑子准教授とお会いすることができ、学生交流や研究連携を検討することができました。また、岐阜大学の小林安文博士が客員助教として、私の部局に2年間滞在してくださったことで、両大学の方法を取り入れた研究ができました。
今回は、応用生物科学部の修士学生と学部生に講義を行いました。特に学部生は、最初は私の英語のスピードについてこられないようでしたが、私がゆっくりと話すように心掛けたことで、彼らにメッセージを伝えられたのではないかと思います。今回は私の研究テーマには重点を置かず、日本の学生らがJDに参加するモチベーションとなるよう意識し、JDの重要性を強調しました。日本の若者たちは、このJDに参加してインドを訪れることで、グローバルな状況を理解することができるでしょう。研究を進めるだけではなくリーダーシップ資質が醸成されることで、これからのグローバル競争に加わり、グローバル企業の研究部門を生き残ることができます。私がここで一つ強調したいのは、今回の講義により数名の学生のモチベーションを高めることができたのではないかということです。講義の後、学生らがJDに興味を持っていると話したそうです。きっとJDに参加してくれることでしょう。

カティアール 2018年2月には、インドの科学技術省及び日本学術振興会による助成を受け、ジョイント・シンポジウムを岐阜大学と共同で主催しました。このシンポジウムでは、IITGと岐阜大学だけでなく、インドや日本の他大学の専門家にも参加してもらうことで両国の協力体制を確立することを目的としました。どのように両国の専門家に協力してもらうのかだけでなく、どのようにしたら専門家同士を繋げることができるのかが非常に重要なポイントでした。この共同シンポジウムは日本とインドの異なる産業や学術機関が集まった非常に良い、最初のプラットフォームとなりました。学生と研究者を育成するJDのビジョンはこれと同じで、協働教育と研究開発という、二つの異なる次元において包括的な成長が進むよう、双方の大学と両国(の行政・企業)が、より大きな枠組みの中で実施していきます。
今回は岐阜大学で講義を行うことができて、とてもよかったと思います。私は学習熱心な彼らの姿を見て、言語の壁はあるものの新しい世界を理解しようとしていると感じました。日本とインドの学生では、教室での振る舞いは若干異なります。しかし、ともに講義を理解したいという思いを感じます。それに対して教員として学生が考えていることを理解し、与えられた短い講義時間内に学生たちの学びたいという思いにどう応えていくのかが重要であると思います。その点でも今回の講義の機会はとても役立ちました。今後も交流の機会を多く持つようにできれば、両国の教員にとっても学生にとっても良い経験になると思います。

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久米 最後の質問になりますが、JDは2019年4月に修士課程と博士課程で開始します。JDへの期待はありますか。また、岐阜大学との共同研究に期待する点はありますでしょうか。

サフー JDに関しては、私はチームの一員として成功させる責任があると思っています。JDでは、学生を交換し共同学位を与えることだけではなく、どのようにして共同学位を持った学生をそれぞれの研究分野でのグローバルリーダーに育てるかが重点となります。彼らの研究をどのように両国の企業や事業団体と共同して行えるようにするか、そしてインドの資源を日本経済ひいては世界経済の利益のためにどのように開拓し、活用できるかを考える責任があります。一方で、私たちIITG教員にはアッサム地域で事業を行うインド企業が日本企業の先進技術からどのように利益を得ることができるかも考えていく必要があります。つまりそのためには、教員間の共同研究が最も重要となります。共同研究を介したグローバルリーダー育成及び学生を文化交流の要とした両国間の強固な協力体制の構築により、企業間のパートナーシップ形成のための扉を開くことが我々の主な目的です。

カティアール 私もサフー教授と同じ期待を思っています。このプログラムを成功に導く責任があり、JDが有益なものとなるよう、できる限り貢献したいと考えています。これはIITGと岐阜大学のプログラムの一つではありますが、インドと日本の大学の"モデル"を構築するものでもあります。JDを実現するために両大学が努力を重ねてきました。このJD設置は、他の大学においてもインド-日本間の協働教育プログラム、特にJDを立ち上げる基礎となります。我々のJDでは、インドの資源と日本の技術的な専門知識とノウハウを融合させることになるので、大きな成功を収めるに違いないと思いますし、このJDは既存のプログラムよりも非常に良いものとなるでしょう。JDにかけられている大きな期待に応え、また、両国間の協働教育の新たな目標を設定していければと思います。

久米・柳瀬 岐阜大学とIITG、日本とインドの協力の輪の役割をJDが果たしてくれることを願っています。どうもありがとうございました。

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